TailscaleのSubnet RouterとExit Nodeは、どちらも一台の端末を別の通信先への中継に使います。名前と設定画面だけを見ると似ていますが、選択基準は単純です。届けたい宛先がLAN内の限定された範囲か、インターネット全体かで分けます。
「Subnet RouterはLAN内の特定範囲へ、Exit Nodeはインターネット全体へ通信を送る」では、この違いを短くまとめました。この記事では、クライアントへ渡される経路と、設定後に何を確認するかまで整理します。
まず全体像
Subnet Routerは特定のプライベートネットワークへ届ける
Subnet Routerは、自分が到達できるIP範囲を、tailnet(Tailscaleで同じネットワークとして扱う端末群)へ経路として知らせる端末です。例えば自宅LANの範囲を知らせると、外出先のTailscale端末は、その範囲宛ての通信をSubnet Routerへ送ります。
用途は、Tailscaleクライアントを直接入れられない機器への接続です。プリンター、NAS、カメラ、管理画面を持つネットワーク機器などが当てはまります。
設定後は、次の3点を確認します。
- ルーター端末が経路を通知している
- 管理画面で経路が承認されている
- どの端末がどの機器へ通信できるかを、アクセス規則で許可している
経路が承認されていても、アクセス規則で通信が許可されていなければ届きません。経路と許可は別の層です。
TailscaleのSubnet Routerは、既定で送信元IPを中継端末のIPへ書き換えます。この処理をSNATと呼びます。そのため、LAN内の機器からは接続元がSubnet Routerに見えます。
元の送信元IPを保持する構成もありますが、戻り経路の設計が必要です。家庭内の小さな構成なら、まず既定値のまま到達を確認すると切り分けやすくなります。
Exit Nodeはインターネット向けの既定経路を引き受ける
通常のTailscale接続では、tailnet内や、経路として知らされたLANの範囲宛てだけがTailscaleを通ります。Webサイトなどへの通信は、端末が現在つながっている回線から直接出ます。
Exit Nodeを選ぶと、クライアントの非Tailscale通信はその端末を経由します。Exit Nodeが、宛先を限定しないインターネット向けの既定経路を引き受けるためです。
経路表では、IPv4を0.0.0.0/0、IPv6を::/0と表します。
Exit Nodeとして広告する設定と、管理者による許可に加え、使う側の端末でもExit Nodeを明示的に選びます。Exit Nodeへ接続しただけで、自動的に全通信が切り替わるわけではありません。
また、Exit Node利用中はクライアントのローカルLANへ到達できなくなるのが既定です。必要な場合は、ローカルネットワークへのアクセスを許可する設定を別に有効にします。
宛先を経路表へ置き換える
二つの機能は、通信の目的を経路へ置き換えると区別できます。
| やりたいこと | 選ぶ機能 | 配る経路 | 通信の出口 |
|---|---|---|---|
| 自宅LAN内の特定機器へ接続する | Subnet Router | 広告したプライベートIP範囲 | そのLANに接続したルーター端末 |
| インターネット通信を自宅などから出す | Exit Node | IPv4・IPv6の既定経路 | 選択したExit Node |
両方を同じ端末で提供することもできます。ただし、同じ端末で両方を動かせても、使い分けは必要です。
障害時の切り分けでは、LAN内の広告経路が使えないのか、既定経路の選択ができていないのかを分けて確認します。
設定後は最終宛先まで確かめる
Subnet Routerでは、ルーター端末のTailscale IPへ届くだけでは不十分です。その先のLAN内機器へ接続します。戻りの通信まで成立することも確認します。
Exit Nodeでは、クライアントがExit Nodeを選択していることを確認します。さらに、インターネット側から見える送信元がExit Node側へ変わったかを確かめます。
ローカルLANアクセスを許可した場合は、Exit Node利用中にも手元のLANへ届くかを別に試します。
Wake on LANのようにブロードキャストが関係する用途は、さらに確認が必要です。「Tailscaleでスリープ中PCを起こす構成を、通信経路から順に整理する」で書いたとおり、IPの経路があることと、LAN内のネットワークアダプターへマジックパケットが届くことは同じ検査ではありません。
まとめ
Subnet Routerは、広告したプライベートネットワークへ通信を送ります。Exit Nodeは、インターネット向けの既定経路を引き受けます。
どちらもTailscale端末が通信を中継しますが、判断基準は中継端末の種類ではありません。最終宛先がLAN内の限定された範囲ならSubnet Router、インターネット全体ならExit Nodeを選びます。